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カット石編

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2004年11月号【パイロープ・ガーネット】
2004-11-01
アリゾナ産パイロープ・ガーネット
(クロム・パイロープ)
下の小さな4点はボヘミア産のパイロープ・ガーネット
 
 
『パイロープ・ガーネット(Pyrope garnet)』

古くは中世から赤い宝石に対して付けられた呼称に『カーバンクル』がある。当時はルビーやスピネル、そしてガーネットがこの名前で呼ばれていた。しかしその呼称は現在、赤い色のガーネットに限って使われているようだ。赤い色が血を連想するかららしく、十字軍の兵士達は戦傷から身を守る目的で身に着けたという。一種の護符的な目的を期待したもので、その意味では日本の『千人針』にも似ている。
カーバンクル(Carbuncle)は本来その語源がラテン語で、カルブンクルス(Carbunculus)つまり“燃える石炭”という意味をもっていた。最初はアルマンディン・ガーネットの赤いものがこの名前で呼ばれていたが、14世紀になるとボヘミアのトレプニッツから血のように真っ赤なパイロープ・ガーネットが大量に発見される。このガーネットの語源も“火”の意味の“pyro”に由来する。そこでカーバンクルはパイロープ・ガーネットに取って代わられることになる。そして『ボヘミアン・ガーネット』と呼ばれて人気があったが、実のところはルビーにも劣らない真っ赤な血のように見えて美しいものはあまり多くなく、黄色みを帯びているものが多かった。加えて粒が小さい。その後まもなく南アフリカのダイアモンドの産地でより上質のものが発見されたことにより人気が落ちた。さらにはアメリカのアリゾナとコロラドの両州、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンからも相次いで発見された。現在ではロードライトの方に知名度があるようだが、ガーネットの中では本来はパイロープの方がもっとも有名であった。なんともルビーに良く似ているからで、 その人気を不動のものにしたのは南アフリカのものとアメリカのアリゾナ州のものである。しかしパイロープにはあまり大粒のものは見られない。写真はそのアリゾナ産のパイロープである。正確には『クロム・パイロープ』に分類され、そこまでも真っ赤で『アリゾナのルビー』と呼ばれた。
 
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