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飯田孝一コレクション

【レインボー・クロスマーク・ガーネット】 -Iida collection-

カット石の魅力 No 1

この標本は『ヘソナイト Hessonite』に区分されるグロッシュラー・ガーネットである。かつてはその色合いから“シナモン・ストーン Cinnamon stone”という特別な名前で呼ばれた。この色のガーネットは古代に於いては特別に貴重視されており、古代のギリシアやローマの人々はこのガーネットを用いて、カメオやインタリオ、そしてカボションに磨き上げた。当時加工用に使われた石は、イタリアのアラバレーやスコットランドのムル島で産出したものだが、時にセイロン島から持ち込まれたものも使われた様だ。いくぶん時代が下がると遠くカナダからのものも使われた記録がある。
十字架状の虹色部
ガーネット模式図 d(110) n(211)
   このカット石は、カナダはケベック州アスベストスのジェフリー鉱山で産出されたもので、当時のものではないがかなり古くに採取された結晶から磨かれたもの。この鉱山のものは現在は市場ではあまり見かけなくなっている。 結晶の基本形は“d面(110)”から成る「斜方(菱形(りょうけい))12面体」で、各面の間に“n面(211)”が細長く存在する「集形(しゅうけい)」をとっている。(模式図を参照)
この石は広域変成岩中に結晶しているので、スカルン鉱床中に出るヘソナイトの様な“糖蜜状組織 treacle”は見られない。独特の色合いは、わずかの“マンガン(Mn)”と“鉄(Fe)”を含む事による。
この結晶の特異な点はその構造で、n面の内部はd面同士の端面の階段状の積み重なりから構成されている。結晶を偏光板間で観察すると、その部分が複屈折の様相を呈し虹色の十字架状に輝く。(写真左:十字架状の虹色部は模式図のn面にあたる。その4隅はd面)
現在時点ではこの様な特性を示すヘソナイトは他の産地からは見出されておらず、本産地と判断できる特徴と考えられる。
 

 
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