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原 石 編

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2004年2月号【山金】
2004-02-01
 【山金(やまきん)】
『山金(Mountain gold)』は天然に産する金、いわゆる“自然金(native gold)”をいい、もっともよく知られている『砂金(Placer gold)』に対して使われる対照呼称である。
さて、宝飾業界にいるものが『金』と聞けば、どのようなものを連想するだろうか。ほとんどの場合は、“インゴット”や“プレート”のような精練して作られた“地金”を連想するはずである。
また、金は古代からもっとも早く知られていた貴金属で、極めて貴重で高価なものだから、もしも「金の鉱山を発見した」とか「砂金の鉱床を見つけた」などと聞けば、キンキラキンの塊がザックザクと採れるような感じがして、取りも直さず大金持に成れる気がしてしまうだろう。しかし現実にはそのようなことはなく、砂金は別としても、金の粒が岩石の表面にベッタリと付着しているなどということはあまり在り得ないことである。
金の鉱石は普通のものは『銀黒(ぎんぐろ)』と呼ばれるもので、石英中に黒色の脈が入っただけのものにしか見えない。銀黒は鉱山で使う言葉だが、輝銀鉱などが主となっているので、黒色にしか見えないのである。金はこの脈の中に微粒子状となって含まれているから、その石(金鉱石)を掘り出し粉砕し、精練し、純度(金性)を上げて我々が装飾品の加工に使っている地金となって登場する。したがって地金のほとんどは、精練されて規格化された純度をもつ。
金を財産の代価としての物質として捉えている人のほとんどは、その純粋無垢な部分にのみ価値を考える。しかし金またはそれを含有する鉱石を標本として捉えているものにとっては、あくまでも肉眼で見える事が貴重なもので、自然に産している様を“自然金”として評価するのである。
代価としての価値観を金に持つ人々にとっては完全に異次元のものとしてその目に映る、自然の条件下で形成された“山金”の形にはとても美しいものがある。しかし純度は精練金には及ばない。通常では1~2割程度の銀を含んでいて、銅や鉄を含むものもあり、純度は一定しない。対して砂金では、混入している銀は数パーセント程度が純度の基準となる。
写真の標本は、地下から熱水に溶けて上昇した金が石英脈の割れ目や空洞部に侵入し、その形が作られたものである。岐阜県の大涌鉱山から産出したもので、葉状片のものと不定形の結晶形を示しているものとに見える。
伊藤 貞市 櫻井 欽一 著の『日本鉱物誌 上巻(昭和22年12月5日発行)』に、その記載が見られる。


インゴット(ingot)
貴金属(金・プラチナ等)の鋳塊をいう。和名は俗に“なまこ”という。
 
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