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原 石 編

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2004年3月号【シンター】
2004-03-01
【シンター(Sinter)】
俗に『湯の花』といったほうがわかり易いだろう。湯の花は温泉沈殿物で、それは泉質によっていくつかのタイプが知られている。もっともよく知られたものは『カイザライト』と呼ぶ白色多孔質の含水珪酸からなる金平糖状や鍾乳状のものである。写真のものはそのようなイメージにはないが、これでも立派な湯の花である。しかしその成分は“含重曹弱食塩水泉”から形成された沈殿物で、珪酸質ではない。まるで芯を抜いたパイナップルの輪切りのように見えるこの湯の花は“炭酸カルシウムの『霰石(アラゴナイト)』”で、長野県の松代温泉で湯元(源泉)から温泉水を引いてくるときの管の内部に形成されたものである。ではなぜこのような形になるのだろう。
熱い温泉水が管の内部を流れると、管の外側が冷たいために温泉水の中に溶け込んでいる成分が温度差で沈殿結晶化する。発生した微結晶はやがて管の内壁に着床し、全体を埋め尽くすとそこから管の内部に向けて結晶が伸び始める。それら微細な結晶粒子は一種のコロフォーム構造をとって成長し、管の内部に向かって空間を埋め尽くすように伸びていく。ちょうど鍾乳石の逆の状態である。このような成長のモデルは、マラカイトやロードクロサイトではごく普通に見られるパターンである。サンプルを人為的に着色してみたのでその成長の様子がわかる。直線状の部分は伸長方向に沿って歪み割れしたものである。
源泉を引いている管は、湯の花の成長につれて次第に中が狭くなり水流量が低下する。そこで一定の時間が経過すると、管を接合点から外して内部の沈殿物を抜き取る。松代温泉では時にこれを彫刻し、土産物として売っていることがあると聞く。
 
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