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原 石 編

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2004年9月号【奇石・珍石-その1-“餅石”】
2004-09-01
焼餅石 長野県武石村産出
【奇石・珍石-その1 餅石】
“餅石(もちいし)”と呼ばれる奇石がある。和歌山県熊野海辺の飯田には、古くから『浜の地蔵の餅石』とよばれるものが、京都の丹後には『黍餅石』と呼ばれるものが知られるが、もっともよく知られた餅石が長野県の武石村下本入から産出している。
凝灰岩のなかに出来た空ろの部分に、親指の頭大のものから握りこぶしくらの大きさの褐色の“団球”が生じている。『焼餅(やきもち)石』と呼ばれるが、二つに割ってみると、その内部に空洞壁から中心に向かって『緑簾石(Epidote)』の針状の結晶が伸びて詰まっている。典型的な『異質晶洞(ジオード Geode)』である。
このような緑簾石の餡を持つ団球は、埼玉県の中津川、長崎県の奈留島、山形県の立谷沢など数ヵ所でも見られるが、武石村のものほど見事なものはない。緑簾石は、凝灰岩の中の空洞内にその後に生じたものである。生じた中味は水晶の場合もある。そこで、団球の中味が“緑簾石”の場合は、イメージ的には『うぐいす餡』なのだが意に反して『黒餡』と呼ばれている。そして“水晶(石英)”の場合は『白餡』と呼び分けられる。
このほのぼのとした奇石は明治初年頃に発見されていたもので、当時は“鬼の餡餅”と呼ばれていた。その後昭和の始め頃になり、鉱物の標本商が大規模に採集したことから現地での採集は難しいものとなったという経緯がある。
今回からしばらくの間は『奇石・珍石』を中心に取り上げる。
 
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