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原 石 編

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2004年10月号【産出状態を示すトラピッチェ・エメラルド】
2004-10-01
右の写真は、左の写真の一部を拡大撮影
 【産出状態を示すトラピッチェ・エメラルド】
『トラピッチェ(Trapiche)・エメラルド』は、1964年以降にコロンビアから宝石市場に登場してきた新しいタイプのエメラルドの結晶である。首都ボゴタの北方に位置するチボール鉱山から産出されたもので、結晶の中心にさらに細い六角の柱があり、そこからまるで歯車の歯のように細い結晶が六本放射状に伸びている。続いてムソー鉱山からも発見されたが、ムソー産のものは結晶の断面の状態がチボールのものとは大きく異なり、中心から放射状に六等分されている。
しかしそれらの結晶が“いったいどのような状態で産出するのか”ということは採集した人以外には見たことがないのが現実だろう。写真の標本はチボールから産出された『泥灰岩』である。よく見ると、その中に結晶が点在しているのが解る。緑色の小さな結晶が層理面に点々としている。個々の点をよく見ると小さな花のようだ。遠目で見るとまるで干潟に付いた小鳥の足跡のようにも見える。
“アルミニウム(Al)”や“シリカ(Si)”の多い堆積物中で“ベリリウム(Be)”と“クロム(Cr)”が出会ったことによって過飽和状態が起こり、エメラルドの核が生じた後にその核結晶の“稜(辺)”の部分から急速に成長が進み、歯車の形となったことが見て取れる。
 
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