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原 石 編

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2003年8月号【瑪瑙のバラ】
2003-08-01
-ブラジル バイア州産-
【瑪瑙のバラ】
“石のバラ(薔薇)”といえば、もっともよく知られているものは『デザート・ローズ』である。砂漠のバラと愛称され、重晶石(バライト)や石膏(セレナイト)が砂地の中で放射状に群晶して、まるで薔薇の花が石に化したかのように見える。鉱物の世界では有名なもので、不可思議、あるいは奇石とも言えるものだ。しかし石のバラはバライトやセレナイト・ローズだけとは限らない。宝石の世界でもっとも良く知られたバラは『アイアン・ローズ』だ。鏡鉄鉱(ヘマタイト)の結晶が花房の様に集まっていて、ダイアモンドのインクルージョンとしても有名なものである。最近では『トルマリン・ローズ』なるものも見られるようになった。だが上記したバラたちは鉱物の集合形態としてはたいして珍しいものではない。
しかしここに成因が理解しずらいバラがある。いわゆる“晶洞瑪瑙”なのだが、その表面に見事なバラの花が咲いている。瑪瑙の晶洞といえば、もっとも知られたものに『サンダー・エッグ(雷鳥の卵)』がある。その卵(球顆)は玄武岩質溶岩の気孔中に形成された瑪瑙の晶洞で、多くのものはその内部に水晶が群生している。その球顆、正式には『ジオード(Geode)』と呼ぶが、典型は玄武岩中のものである。しかし瑪瑙のジオードはいくつかの出来方をするらしい。
ここに取り上げた瑪瑙のバラは、粘性のある堆積物中に下方から上昇してきた熱水に溶け込んでいた珪酸分により形成されたものである。その断面を見ると、卵の殻に相当する部分が瑪瑙で構成されており、やはり内部に向かって水晶が群生しているのがわかる。しかし球顆の外側は、通常のサンダー・エッグが海綿状なのに対して皺で覆われている。その皺もよく見ると瑪瑙である。この皺は“瑪瑙の花”とか“コロナ・アゲート”と呼ばれる瑪瑙の裏面の皺によく似ている。瑪瑙の花もコロナ・アゲートも共に平板をしているのが特徴だが、こちらは球顆の表面であり形成の特殊さを感じさせる。水飴の中の気泡のように、粘性の堆積物中で次第に大きく成長した泡の内面に形成された瑪瑙の球顆であることがわかる。ガスは粘性の堆積物を薔薇の花のように押し広げている。
標本は花の部分を切り取り、瑪瑙の壷の蓋に見立てている。
 
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