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原 石 編

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2003年11月号【トルコ石】
2003-11-01
 【トルコ石(Turquoise)】
この綴りは『トルコの宝石』という意味を持っている。しかし現実には『ペルシャの宝石』であって、トルコからは一片も発見されていない。この宝石は、イラン産の石がシナイ半島(エジプト)のものと共にトルコ商人によりヨーロッパに持ち込まれた為に、ヨーロッパでトルコ産の宝石と信じられた。
それは明るい空の色にも似て、持つ者をエネルギッシュにさせる魅力をもつ。その空青色の宝石は、特徴的に目には見えない大変に微細な結晶の集合からなる。では、なぜトルコ石は、水晶やエメラルドのように直接手に取れるような大きさの結晶にはならないのだろうか。
トルコ石は次のような出来方をすると一般には考えられている。トルコ石の形成は空の上の水蒸気に始まる。水蒸気は、その中に大気中の“二酸化炭素(CO2)”や硫化水素が分解して出来た“硫黄(S)”を溶かし込んでいる。それはやがて雨となって大地に降り、土壌中に染み込んで地下水となった。その後地下水は、地下の岩石からトルコ石の形成に必要ないろいろな成分を溶かし出す。水中に存在していた硫黄がその役割をしたと考えられている。
最上級の色とされる『ロビンスエッグ・ブルー』のトルコ石が、現在ではイランとアメリカからのみ産出する。特にアリゾナ州のスリーピング・ビューティーは著名な場所として知られるので、ここからはアメリカでのトルコ石の出来方を例にして話を進める。
地下水は、岩盤中の火成岩の『アルカリ長石(KAlSi3O8-NaAlSi3O8)』から塩基性成分を溶出した。そして 鉄、アルミニウム、シリコン等の酸化物がその中に取り込まれる。その後は岩盤下部に染み込んでいく過程で、近くに銅の鉱石やリン灰石があった場合、そこから銅や燐を溶出させ、それと結び付きそれが色の原因となったと考えられる。豊潤となった地下水は、やがて粘土層やチャートなどの保水性のある物質に到達すると、そこに存在する大小の空洞に溜まり、次第に過飽和度が高まり溶液はコロイド化する。過飽和状態を境にコロイドの中では結晶化が進行して、“CuAl6(Po4)4(OH)8・4~5H2O”の組成をもつ微細結晶の集合体が生じた。これがトルコ石である。
形成の場所に割れ目や平坦な空洞があった場合には脈状となり、そこが粘土質であった場合にはその中で粒状の結晶核として発生し、徐々に大きく成長しやがては任意の大きさの球状(ノジュール Nodule)として団塊状に成長する。この球体が粘土中の随所で周囲の土壌を排除しながら成長した場合には、それぞれの球体がぶつかり合い、時に網目構造が生じ『ネット・トルコ石 Net turquoise』となる。そして地下水が染み込んだ部分が多孔質や軟質であった場合には、周囲の岩石を取り込みながら固まり鉱染状と呼ばれる状態になり『マトリクス・トルコ石 Matrix turquoise』と呼ばれるものになる。
1912年にアメリカ バージニア州 Lynch鉱山から微細な針状結晶が産出されたことにより、結晶は三斜晶系に属することが解明された。しかしそのような肉眼的なサイズの結晶は大変に稀れである。では『長石』の形のままトルコ石に変化してしまっている写真のものはいったいどう解釈したらよいのだろう。このようなものを『仮像』という。一般に考えられている成因どおりだとするならば、このようなものが出来るはずがない。
標本はネバダ州シュードモルク鉱山産のもの。
 
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