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カット石編

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2003年7月号【ホワイト・クリソベリル】
2003-07-01
【ホワイト・クリソベリル】
クリソベリル(Chrysoberyl)はその語源からすれば当然黄色系の色をしているのが普通である。クリソ(Chryso)はギリシア語で金を意味していて、金色のベリルという意味でつけられた。
この宝石の変種には3つのタイプのものが知られている。1つは『キャッツアイ』、2つ目は『アレキサンドライト』、そして3つ目は『バナジウム・クリソベリル』である。中には『アレキサンドライト・キャッツアイ』などというものも知られている。そのなかではアレキサンドライトは最も高価で、バナジウム・クリソベリルはそれほど高価ではないものの最も珍しいものとして知られている。したがってキャッツアイ変種や最もポピュラーなクリソベリルの黄色系がごく普通ということになる。その色の原因は不純物としてほんの少量含まれている"鉄"によるものである。ただし黄色系といっても、黄緑色から褐色がかったものまでの色の範囲がある。
しかしこの宝石の中で最高に珍しいものといったら、それはカラーレス(無色)の変種である。この変種については、当所発行の"鑑別室情報第33号(平成14年4月19日発行)"で取り上げたが、クリソベリルの中に普通に含まれている鉄がほとんどに近いほど含有されていない。したがって通常のクリソベリルのイメージはまったくない。しかし色はほとんどないものの、テリが強いので宝石としての魅力は十分にある。
それはスリランカを初めとして、タンザニア、マダガスカルから産出が見られて、ごく淡い緑黄色味をやっと感じる程度の無色である。スリランカとタンザニアとマダガスカルはかつては一つの場所だったから、同種の石が発見されるのだろう。
このホワイト・クリソベリルは鉄分の含有が極くごく少量しかない。黄色系のクリソベリルと比べると屈折率は低いものの、比重、蛍光性、カラーフィルター検査の結果から、そして成分分析から、クリソベリルであることがわかる。
しかし、包有物に特徴的なものが見つからない場合、鑑別結果の判定にはかなりの困難さを伴うことになる。鉄分の含有の無いホワイト・クリソベリルは合成で作られているからである。
ここに取り上げたホワイト・クリソベリルはスリランカ産のものである。成分分析の結果からも鉄の含有がほとんどない。結果完全な無色でありかなり珍しい。したがってこの石にインクルージョンが無い場合、当然のことながら合成クリソベリルとの区別は難しいだろう。
写真は1.859カラット、スリランカ ラトナプラ産。
 
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