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カット石編

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2004年1月号【デンドリティック・アメジスト】
2004-01-01
『デンドリティック・アメジスト(Dendritic amethyst)』
『デンドリティック』とは、その模様が樹木、または樹枝状、あるいはシダ(羊歯)の葉の形に見えるデンドライト(Dendrite)が入っている状態をいう言葉で、和名は『模樹石』とか『忍石』という。
しかしこれは特別の鉱物ではない。マンガンや鉄の水酸化物がコロイド沈殿して微粒子状に繋がり、その形態がまるで植物であるかのように見えるだけである。
その植物とはまったく無縁の物質は、地層の堆積面(層理面)や岩石や鉱物の割れ目に侵入した地下水によって形成される。先述したように、水中に溶解していたものが侵入面上で沈殿したものである。したがってこれは割れ目を形成している素材が水に溶け易いもの以外であれば、あらゆるものに形成されるチャンスがある。時に地層の層理面に魚の化石と共に形成されている事があり、なおさらのことそれが水草の化石であるかのように見える。
この鉱物は化石としての価値ではないものの、デンドライトが大きく鮮明に形成されたものではまさに自然の芸術といえる。そしてそれが形成されている母体とのコントラストに見ごたえがあればあるほど高価に取り引きされる。その場合には母石の価値で決まる。一般には無色の水晶中に形成されたものがもっともよく知られ、比較的に目にすることが多い。
写真のものはアメジストの『クラック』と呼ばれる割れ目にデンドライトが形成されているものである。この程度の明るい紫色のものは、その色合いから『ライト・アメジスト』とか『ピンク・アメジスト』とも呼ばれる。一般にはアメジストのようにその色自体に宝石の意味があるものでは、例えその原石の一部にデンドライトが形成されていたとしても、色の方を重視するから、ほとんどの場合では削り落とされてしまうことになる。そんな理由でこの標本は珍しいものといえるだろう。
 
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