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カット石編

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2004年2月号【ロードライト・ガーネット】
2004-02-01
『ロードライト・ガーネット(Rhodolite Garnet)』
ガーネットの呼称は、その石の最初の発見地や個人の名前に基づいて付けられているものがほとんどだが、それから外れて形容的に使われている呼称がある。『デマントイド』がそうだが、今回取り上げる『ロードライト』もその一つである。
ガーネットとしては、それまで知られていなかった“石楠花(シャクナゲ)”のような淡く美しい色をしたガーネットが、今からおよそ半世紀以上も前にアメリカのノースカロライナ州のMacon郡Mason MountainのCowee Creekで発見された。それは『パイロープ』と『アルマンディン』の中間的な性質を示し、その淡い薄紫色は石楠花ばかりでなく薔薇の花のようにも見えた。まもなくそのガーネットは、色合いから『ローズ・ガーネット』または『ローズライト』などと呼ばれるようになったが、じきに『ロードライト(Rhodolite)・ガーネット』という名前で広く呼ばれるようになった。
しかしそれは安価な宝石『ロードナイト(Rhodonite)』と紛らわしいとの理由から、好ましくないという意見が強い。それは正論であり、時として将来に大きな課題を残すことにもなる。
この種のガーネットはその後、ローデシアのトランスバール国境近くにあるLimpopo川の近くのBeit Bridgeからも発見された。現在ではこの他に、いくつかの場所からもこのガーネットの産出は知られている。中でも今から20年ほど前にタンザニアのカンガラ鉱山から発見されたものは、まるでボルドーの赤ワインを彷彿とさせる美しく深い色をしていた。しかしそれは、屈折率と分光特性の組み合わせから既成事実上ロードライトであるという認識がなされた結果、かなり高価に取り引きされている。ロードライトが特別なガーネットであるかのように受け取られたからで、その名前の下に特別に価値観が加わった結果のものである。
見るからに美しいロードライトは、高価格で取り引きされるべきだろうといえる。しかし本来が分類基準の難しいガーネットである。赤紫色だというだけでインド産の安価なアルマンディンがロードライトと鑑別されたり、光学的な鑑別基準から離れて多くの近似のガーネットがロードライトとして鑑別されている。
今、屈折率や比重の測定データ値からはロードライトに適合させられるが、外観上の色合いからはその感じではない美しいガーネットが見られる。暫定的に表現すれば『バイオレット・ガーネット』とでもいえるだろうか。それはバイオレットの典型の『アルマンディン・ガーネット』とはイメージ的にもまったく異なる。例えれば、アルマンディンの色は安価な葡萄ジュースのようである。カンガラ鉱山のロードライトと呼ばれているものは高級な赤ワインのようだ。しかし暫定的に表現したバイオレット・ガーネットは、更に高級な嗜好酒のようだ。この辺りで、ロードライトの新しい表現が誕生しても良いのかもしれない。
※写真左から、ノースカロライナ州 Cowee Creek産のロードライト、中央はカンガラ鉱山産のロードライト、そして右はブラジル ミナスジェライス州産のバイオレット・ガーネット。
 
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