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カット石編

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2004年3月号【ピクチャー・アゲート】
2004-03-01
『ピクチャー・アゲート(Picture agate)』
“読んで字の如く、絵のように見える瑪瑙”をいう。しかしこの標本に限っては、より正しく『ランドスケープ(Landscape)・アゲート』といったほうがよいかもしれない。ピクチャーとかランドスケープという呼称で呼ばれる宝石には、アゲートの他カルセドニーやジャスパーがある。しかしそう呼ばれてはいても、実際にはそれらはカルセドニーやジャスパーではないものがほとんどである。多くは正確にはそれらとは無関係の堆積岩であり、『砂岩(Sandstone)』や『泥岩(Mudstone)』に水酸化鉄などが鉱染しているものである。切断場所によっては自然の汚れが絵のようになって現れ、風景や具象画のように見えてくる。いわゆる“自然絵”である。その堆積岩が、透明感を有すればカルセドニー、不透明である場合にはジャスパーと鑑別では呼ぶが、この部分は大変に曖昧なもので誤りであり、正確になくてはならない部分であるといえる。しかしこの標本は正真正銘の『瑪瑙』であるところが珍しい。
不定形の岩の割れ目に浸透した“シリカ・コロイド”が、空洞壁の各部分で“コロフォーム構造”による瘤を形成し、更にそれらに影響を受けてバンド縞を描いている。不定形の岩の割れ目内部に潜んでいた模様が、切断研磨によって偶然にも風景となって出現したものである。宝石名はたんなる『バイオレット・バンデッド・アゲート』であるが、この瑪瑙をじっと見ていると、広野の上に入道雲が出現し、にわかに空がかき曇って今にも雨が降りだしそうである。だがその裏側には活動期に入った火山のようなまったく別の景色が広がっている。
白色の雲は“オパール質のクォーツ”である。
 
コロフォーム(colloform)
葡萄状、腎臓状、乳房状などの総称。縞状の構造を伴うことがある。
 
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