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カット石編

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2004年4月号【模造トラピッチェ・エメラルド】
2004-04-01
『模造トラピッチェ・エメラルド(Imitation Trapiche Emerald)』
1964年になって、コロンビアから宝石市場に登場してきた新しいタイプのエメラルドがある。
『トラピッチェ(Trapiche)』と呼ばれる新種の結晶がそれで、首都ボゴタの北方チボール鉱山から産出された。結晶の中心にさらに細い六角の柱があり、そこからまるで風車の羽のように細い結晶が六本放射状に伸びている。この様が、まるで現地で砂糖黍を搾るのに使っている黍搾り機の歯車の形に似ていることから、その名を借りて“トラピッチェ”と呼ばれることになったのである。
それは続いてムソー鉱山からも発見されることになる。しかしムソーのものは結晶の内部がチボールのものとは大きく違い、中心から放射状に六等分されている。外観は通常のエメラルドに似ているが、その断面が大きく異なるのである。それらはカボションにカットされて、その面白い模様から大層な人気があり、結構高価に取引されている。
(注・チボールのものは結晶が細すぎて研磨することができない。さらに現状ではほぼ絶産である)
しかしムソーの“トラピッチェ・エメラルド”は、その特徴から作りものが市場に流通することがある。写真の結晶はその作りものの結晶である。(左側。右側は本物)
三角柱状に削ったエメラルドを6片作り、細く六角柱状に削ったエメラルドを中心にして黒色の接着剤で張り合わせたものが、写真の『模造トラピッチェ・エメラルド』である。よく見るとそれぞれの六片のエメラルドが微妙に異なった色をしている。さらに中心部分の柱との接合部が食い違っている。注意すれば本物ではないことは容易にわかるが、最近ではかなり精巧な作りのものが市場に流通している。六片の各個体の色もほぼ同じで、張り合わせ部分もごく自然にできているものがある。なかなか真に迫っているので、トラピッチェ・エメラルドを購入する際には十二分に注意をすること。
 
 
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