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カット石編

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2004年6月号【琥珀】
2004-06-01
『琥珀(Amber)』
【琥珀の精巧な加工品】  『琥珀』は木が分泌した樹液が固まったもので、いわば天然の化石樹脂ともいえる。
琥珀は今からおよそ1,500万年(一般書では3,000万年)以上の古さをもつものいうが、一部のものではその樹脂を分泌した元の樹木の種類も判明している。
古来からの琥珀の最も有名な産地はロシアだが、この宝石は密度が小さく海水に浮かぶという性質をもつ。そのため、ロシアの地層から洗い出された琥珀は海流に乗って遠くバルト海沿岸地域のノルウェーやデンマークにまで運ばれて海岸に漂着し、再びその地の地層に堆積する。
それらは採掘され、それらの地域では加工を初めとした琥珀産業が興り、多くの宝飾品が作られた。
琥珀は250℃以上では完全に溶解するが、150℃位で軟化し始める。そのためこの性質を利用して独特の加工法が考え出された。琥珀片を選別した後で、粉砕してプレスし一つに成型することができる。『プレスト・アンバー(Pressed amber)』として分類されるが、それは『アンブロイド(Ambroid)』と称して販売されている。また小粒の琥珀をそのまま加圧プレスしたものも作られる。最近のものは技術が向上しており、それらを一見しただけでは1つの原石から研磨された(ソリッド・アンバー Solid amberと呼ばれる)ように見えるものが珍しくない。以前のアンブロイドは半透明であり、また琥珀片をそのまま加圧プレスしたものでは琥珀粒子どうしの境目が明瞭に見えて容易にそれと分かった。しかし最近では黄色で透明なものも多くなり、内部には“グリッター”が存在しているものもある。
写真の左側は、ポーランドで作られたと思われるもので、粒界も部分的に不鮮明で自然の流動模様のように見えかなり精巧である。右は、業界の一部で『マーブル・アンバー(Marble amber)』と呼ばれるもののプレスト製品である。大理石の模様に肖って名付けられたものだが、これにも当然ソリッド・アンバーは存在する。
これらのものは、屈折率測定、紫外線蛍光検査、赤外線吸収スペクトルの測定検査では、当然のことソリッド・アンバーと区別することはできない。その構造を分析することで鑑別を行うが、極く稀に使われている琥珀片の中に小さな虫が見つかることがある。
プレスト・アンバーの製法から考えて、“集めた琥珀粒に偶然混じっていたんだ”と考えたい。
 
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