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カット石編

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2004年9月号【オビキュラー・ジャスパー】
2004-09-01
 『オビキュラー・ジャスパー(Orbicular jasper)』
【オビキュラー】とは球状や円形の状態を指す言葉で、この円球状の部分は発生する岩石の種類を選ばず、さらにそれが発生してくる原因も複数のタイプが知られている。しかしそんな中にあって、その模様が特別美しくて飾りに生かせるほど見事なものは極めて少ないものである。
美しい状態のものでは、その部分を選び原石から基質部と共に切り取り磨き上げて装飾品とする。したがってその模様自体に特別な呼称がつけられることになる。
典型はアゲート類で、そのようなものは特別に『アレッポ・ストーン(Alleop stone)』といい、『アイ・アゲート(Eye agate)』直訳すれば“目玉瑪瑙”の愛称も持つ。その中で、1つのカット中に一つの眼があるものを『サイクロプス・アゲート(Cyclops agate)』、二つの眼があるものを『アウル・アイ・アゲート(Owl gate agate)』という風に分類している。
日本には、このような1つの石に眼を封じ込めて研磨して愛でる好みはほとんどないが、チベットには護符として使う為の文様石が知られている。チベット語で“ズイー(Gzi)”と呼び、それはずばり『目玉石』である。これは後日当所の標本石の中から選び、改めて取り上げる予定でいる。
ところで写真のものは『ジャスパー(Jasper)』に生じたオビキュラーである。特筆すべき点は『ブラッドストーン(Bloodstone)・ジャスパー』にオビキュラーが生じていることである。ブラッドストーンとは、濃緑色の地に血のように鮮やかな斑点が点在していることからこの名があり、和訳すれば『血石』である。その血飛沫も一種のオビキュラーである。
そして写真のブラッドストーンのもっとも珍しい部分は、虹彩の中心にさらに『瞳孔(ひとみ)』が見られることである。その虹彩とひとみはジャスパー中に生じた“オパール質”の球体で、白眼部まである。それらは基質部に特有の“緑泥石(クローライト)”の粒子を排除して見事なまでのリアルさを形成している。
約3トンのブラッドストーンを、加工のために“スラブ割り”している中から見つかり、たった3点しか研磨できなかったという代物である。

スラブ(Slab)
塊状の原石をカットする目的で大きな板に切断した状態をいう。“大割り”ともいい、さらにそれを小さな駒に切り分けることを“小割り”といい“トリム(Trim)”と呼ぶ。
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