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カット石編

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2005年 4月号【バイカラー・ジルコン】
2005-04-01
 『バイカラー・ジルコン(Bi-color zircon)』

宝石業界に於いては、ジルコンはそれほど華やかに表面に登場する宝石ではないようだ。古くは『ホワイト・ジルコン』が用いられ、そして現在では明るい色の『イエロー・ジルコン』に人気があるようだ。そしてその間を繋いだものは『ブルー・ジルコン』だった。いうまでもなく、ホワイトのジルコンはダイアモンドの安価な代用品、イエローのジルコンはトルマリンの代用としてで、トルマリンよりもキラメキが強いので一部では人気があるようだ。そしてブルーのジルコンはトパーズやアクアマリンの類似石としての性格が強いようだ。やはりキラメキの魅力で長年使い続けられてきた。
ところでそのホワイトやブルーのジルコンだが、じつは褐色や黄色の原石を加熱処理して作り出したものである。タイやカンボジアでは、古くからそれを専門にする職人がいて、市場に多くの美しい石を提供してきた。この他ジルコンには赤や緑色などもあり、比較的に多くの色変種を持つ宝石として知られている。写真に登場したジルコンは、一つの石の中にグリーンとオレンジの色が同居している。このようなものを業界では『バイ・カラー』と呼ぶが、ジルコンの場合はじつは大変に珍しいものなのである。
ジルコンという宝石は、“ウラニウム(U)”や“トリウム(Th)”などの元素を不純物として含んでいる。その結果、結晶の中に組み込まれているそれらの元素から放出される放射線の影響で、長い地質時間の間に自身の骨組み(結晶構造組織)を破壊してしまうという事になる。結果として元々は無色であった結晶が褐色に変化して曇ってしまう。これを【メタミクト化】というが、それを通り越すと、結晶の色は結果的にはグリーンにまで変化してしまう。タイやカンボジアでは、褐色の原石を加熱処理して破壊された構造を修正し、ホワイトやブルーのジルコンに変えていたというわけである。しかし内部崩壊が進みグリーンにまで変化してしまったものは、加熱処理を加えてももう元には戻せないそうである。
今回登場させたジルコンは、結晶の成長ゾーンの違いにより放射性元素の濃度が異なっていた結果のものである。この石を仮に加熱したとしよう。するとグリーンの部分は褐色に、オレンジ色の部分はホワイトになるだろう。そうなるとこの石の“自然の妙”とも言えるせっかくの美しさは跡形もなく消えうせてしまうことになる。写真はスリランカ産
 
メタミクト Metamict
ウランやトリウムなどの強い放射性元素を鉱物が含有していた場合、自らの放射線の影響で内部から結晶の格子が破壊されてしまい、非晶質状態になることをいう。
 
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